映画『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』
抽象絵画が確立する前にスウェーデンで独創的な作品を描き、1500点以上の作品を残したにも関わらず、注目されることもなく生涯を閉じた女性画家がいました。美術史に残そうという専門家のインタビューをもとに展開される「ヒルマについて知ってほしい!」という趣旨の映画です。
生涯に莫大な量のメモを残し、そのなかの一つである下記の言葉が印象的でした。
私は分子 私は世界
「描いた」という事実よりも絵画の価値が認められることが美術史においては重要で、その価値を決めるのは買い手がいるかいないかで、専門家が口を揃えて言う限りの話ではMoMAが弊害となっているような印象をもち、映画を通してMoMAを批判しているようでした。
絵画市場がどうなっているのか?分からないので、何ともいえませんが、欲しくても売っていなかったら、買えないんじゃいの?相続した人がサザビーズとかに持ち込めばいいのでは?そういう単純な話ではないようです。
私が気になったこと
キャンバスは布を縫って貼り合わせた自作でした。卵の黄身を絵具に混ぜているのは、何故でしょう。
「生死」「明暗」など、二軸で考える陰陽論的な発想が作品に反映されていますが、作品のなかによくでてくる色はピンクで、好んだ色だったようです。
専門家の一人が、女性は青で、男性が黄という色の象徴があると言っていましたが、日本では女性は赤(暖色)で、男性は青(寒色)というトイレのピクトグラムのイメージがあります。ヨーロッパでも同じじゃないの?という驚きと初めて知る情報をもとにあとから調べてみましたが、宗教画において青は聖母マリア、黄は裏切りものユダの色のイメージです。そこからきているのかは謎で、モヤモヤが残ります。
ヒルマは肉、魚、卵を食べない菜食主義でしたが、82歳で路面列車にひかれて亡くなるまで、特に健康上の問題も抱えていなかったようなので、体にとっても合っていたのではないかと思います。
1枚の絵は男性4人がかりで持たないと運べないくらいの大作で、シリーズで展示するには限られた会場です。難しいとは思いますが、日本でも作品展が開催されることを願います。
ナチュラルな草間彌生さん?的な画風は、テキスタイルにとても合い、グッズ展開はしやすそうな感じがします。
美術史を変えるかもしれない女性画家 ヒルマ・アフ・クリント
1862年10月26日~1944年10月21日 職業:画家
出身:スウェーデン