2年前に制作した『旅するマッチ箱日記』をシリーズ化しました。シリーズの名前は「AR本の旅」です。
「AR」には2つの意味があります。
日本語で拡張現実と訳されるAugmented Realityの略「AR」は、デバイスを通して現実世界を拡張させることにより、体験を増幅させる狙いがありますが、私は紙や粘土などのアナログな方法で本の世界を拡張させるAnalog Realityの「AR」です。
もう一つは「アート(ART)」の語源は「AR(つなぐ)」という意味の印欧語からきているという説を本で読み、アートの考え方がちょっと変わりました。「本」を着想に制作し、読む以外の動作が加わり、偶然の出会いがつなぐ、そんなイメージです。
一言?で説明すると「読む以外の動作を拡張する、つなぐ本のおもちゃ」です。
大好きな語源の本です。英語なのに縦書きで非常に読みにくいですが、内容は面白いです。
『語源でわかった!英単語記憶術 (文春新書)』
ワクワクする非日常を自分で作り、こっそり覗く
何でそんなおもちゃを作るのか?
なかなか旅にでることがない、私自身が旅をしていなくても、制作したものが世界を旅していたら?自分の分身を旅させたら?気持ちの悪い言い方ですが、指紋とかDNAが体から離れてどこかを歩いていると思うと、ワクワクします。
日常を送っている私が非日常をこっそり覗いて、体感しているような錯覚さえ感じます。日常生活のなかで、自分がワクワクするためだったり、誰かがワクワクするきっかけを作れたら、何か変わるような気がしています。
着想になったのは、前回書いた記事の通りですが、過去に見た映画(2作品)も影響しているかもしれないと思い出しました。
『アメリ』
アメリのお父さんは、家にこもり庭いじりをしていました。そんなお父さんに旅をしてもらおうと、アメリは庭にあった小人の置物を知り合いのキャビンアテンダントの女性に預けます。
フライトで行った先の国で、小人が観光しているような写真を撮ってもらい、その写真をお父さんに送ると、小人が旅している様子に最初は困惑しますが、次第に次はどこを旅するのか?楽しみになっていきます。
最後は家に戻っている小人を見て、自分も旅しようと決意し、バゲージを持って出掛けるシーンがこの映画のなかで一番好きです。
「白雪姫になった気分だったわ!」というキャビンアテンダントの素敵なセリフも大好きです。
『イルマーレ』
『スピード』のコンビ、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロック主演のラブストーリーです。
2人は、湖畔の家というガラス張りの同じ家に住んでいるのに、不思議なことに2年くらい時間軸が異なる、自宅の前に設置されているポストだけはつながっており、手紙のやりとりで、お互いを知っていくという話です。
先の時間を過ごしているアレックス(キアヌ・リーブス)は、引っ越してきたばかりのケイト(サンドラ・ブロック)に、自分のお気に入りの場所を巡ってもらうというシーンがあります。時間軸がずれているのに、存在を感じるしかけがツボでした。
余談ですが…
『イルマーレ』韓国版のリメイクもあるようで、ちょっと気になっています。
AR本の旅シリーズ第2弾「まめまめくん」
話が脱線しましたが、2作目は『まめまめくん』という絵本です。この本と出会ったのは2年前、Facebookで知り合いのお姉さんが「この絵本とてもよかった」という感想の投稿を見たのがきっかけでした。
表紙がマッチ箱に入った小さな人、ちょうど1作目の『旅するマッチ箱日記』に取り組んでいたので、マッチ箱が共通していて「面白そう」と思いました。
読んでみると、個人の能力とか働き方など誰もが一度は悩むような内容です。イラストも話しも素敵なのに、自分らしく働くとか、強みを見つけられなかった私は、なんとなくもやもやしてしまったというのが、正直な感想です。
『まめまめくん』あらすじ
まめまめくんは、小さく生まれてきて、学校に行くまでは自分はなんでもできると思っていました。学校に行き始めてから、一般の人とは同じように出来ないことに気づきます。大人になっても小さいままでしたが、最後は〇〇になったという話です。
2年前のことなので、絵本の存在は薄れていましたが、今年の夏、山形のダダ茶豆をスーパーで見る機会が多く、枝豆の食べ比べをして楽しんでいたので、「枝豆→豆→まめまめくん」と連想し、山形で再チャレンジしてみようと思い立ちました。
マッチ箱を使うと、マッチ箱作家と勘違いされるかも?という変な心配もありましたが、それ以外でピンとくる本も思いつかないので、前回と同じ山形ビエンナーレに合わせて「アートの祭典にぴったり!」と勝手に思い込みました。
『旅するマッチ箱日記』を山形から仙台に持っていって下さった方に連絡を取り、『まめまめくん』をどこかに置いてもらえるようお願いすると、快く引き受けて下さいました。
おもちゃの説明もほぼしていませんし、遊び方マニュアルはないので、どこに置いたのか?誰かに渡すときに説明をしたのか?詳しいことはわかりませんが、素敵なゲストハウス(松本亭一農舎)に泊まったり、山形から移動して、岩手県花巻でお祭りに行ったり…旅を続けています。
みんなみんなアーティスト
「きっかけ作家」という聞いたこともない、誰なのかも分からない人が始めた遊びに応えてくれる人がいる、未知なるものにつながろうとする人を私はアーティストと呼びたいです。
アートと言うと絵や創作物、アーティストは絵を描いた人、創作した人を指しますが、言葉の根っこにある行為は「つなぐ」で、それは単体や一人ではありえないです。分からないものに近づく、興味を持つ、行動する、受け取る人もまたアーティストと考えていいように思います。
私が創作したものを記事にするのは、記事という意味のArticleは「つなぐ」という意味の「ar」が語源であり、記事もまた「つなぐ」という動作が根底にあります。「きっかけ作家」として記事を書くことは、アーティストでもあると考えています。
実はまめまめくんが選んだ仕事がアーティストです。(伏字にする意味がなかった…)
アーティストの皆さまへ、アーティストのまめまめくんと一緒に遊んで下さりありがとうございます!
最後に…
SNS(ツイッターやインスタ)に投稿する際に、タグをつけておくと思いもよらない人から「いいね❤」をもらうことがあります。今回は「まめまめくん」のイラストを描かれた、フラン人のイラストレーター、セバスチャン・ムーランさんが、この取り組みに気づいて、いいねを押してくださいました。「まめまめくん」が山形から出発してフランスにたどり着いたらいいですね。