『窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子
それをいってしまったら、どう考えても、本当に、話は、もう無くなった。トットちゃんは(少し悲しい)と思った。トットちゃんが、そう思ったとき、先生が立ち上がった。そして、トットちゃんの頭に、大きくて暖かい手を置くと、
「じゃ、これで、君は、この学校の生徒だよ」
そういった。……そのとき、トットちゃんは、なんだか、生まれて初めて、本当に好きな人に逢ったような気がした。だって、生まれてから今日まで、こんな長い時間、自分の話を聞いてくれた人は、いなかったんだもの。そして、その長い時間のあいだ、一度だって、あくびをしたり、退屈そうにしないで、トットちゃんが話しているのと同じように、身をのり出して、一生懸命、聞いてくれたんだもの。